解決支援者の現場日記 : 旧ブログ

無自覚な過去の傷み

不登校やひきこもりの相談を受けていますと、あらかた学校でのいじめや失敗体験、人間関係

のもつれなどが引き金となり閉じこもりだしたという話があります。ともすると、これらの出来事が

原因としてとらえられてしまいます。しかし、これが本質的な原因である場合はほとんどないと

いっていいでしょう。中には、前髪を自分でハサミで切り損なったのをきっかけに6年間ひきこ

もった子もいます。もちろん原因は他にありました。

こうとらえてみてください。

500段の階段を一気に駆けあがり、頂上に着いてみたら10段ぐらいの跳び箱があり、「これを

跳んだら終了」と言われたら、さすがに跳べませんね。いつもだったらなんでもない跳び箱でも、

足がガクガク震えてぶつかって崩れ落ちてしまうでしょう。

きっかけとなった出来事は、本来だったらつまづきの原因にもならなかったはずのことです。

それがその時には精神的に跳ね返せるだけの余力が無かったということです。よく「そのくらいの

ことでなんだ!」と親や周囲の大人たちから出ることからも分かるでしょう。

ではなぜその時、それだけの抵抗力がなかったかを考えてみる必要があります。それが先ほど

の500段の階段です。つまり、すでに相当のストレスをそれまでに抱えていたということです。自身

の許容量をはるかに上回るだけの心的ストレスを抱えていて、それがきっかけの出来事によって

あふれ出したというわけです。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)もトラウマを受けた数年も後に突然発症する場合があると言わ

れています。

では、許容量を超えるほどのストレストラウマがどの時期、どこにあったか。それを知ることが

回復の手助けをするためにも大切です。多くが日常の、その子にとってはあたりまえの生活の

中で受けた傷の場合です。

日常とは言っても、本人にとって決して軽々しいものではありません。むしろ、深刻なダメージ

をあたえているものが多いのです。しかし、慢性的なダメージは、本人すらその影響に気づけ

ないでいる場合が少なくないのです

不登校やひきこもりの理由を親が尋ねても答えないことが多いですが、その理由がここにあります。

きっかけになる出来事の多くは、叱責批判排斥など自身を否定されるような場面です。

自己の存在をうとんじられる周囲からの言動などにより、こころの心棒がポッキリ折れてしまうのです。

ですから、それまでにあったものは、自分を自覚できず、足元が揺らぎ、周囲からの自分に向け

られる評価に過度に怯えているといった状態です。「居場所がない」と言いますが、自分がここに居る

意味を見いだせずにいる状態なのです。

こういった状況で、先のような場面に遭遇するともろくも崩れ落ちます。

では、これまでにそういった背景をどこで作ってしまったのかを親御さんには考えていってほしい

のです。

 

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