HOME > ふぉーらむ北辰 > 3つの柱 > 心理教育アプローチ

3つの柱

心理教育アプローチ


地球家族エコロジー協会が行う支援活動は、「心理教育(=サイコエジュケーション)」という手法をベースにおいています。心理教育とは、カウンセリング心理学を用いたカウンセリング実践の一分野です。
心理教育が扱う領域は

職場、教育、家庭、社会生活(人間関係)

にわたります。
現在、不登校・引きこもり、虐待、依存症といった不適応行動(=アディクション)が表れた場合、多くの方が医療機関を訪ねざるを得ないという状況が少なくありません。しかし、職場、学校、家庭、いろんな人間関係の中で、誰だっていくらかの悩みや問題を抱えていると思います。ただその中で、悩みや問題の処理のやり方が著しく偏っていて、第三者から見て理解しがたい行動の問題として表れたものがアディクションです。

偏り方としては確かに大きいかもしれません。しかし人間は、健康であるからこそ悩む生き物です。他人から見ると異様に映る行動も、おおもとは「何らかの問題や葛藤を抱えて悩んだり苦しんだりしているからこそ」ということに過ぎません。それをもってイコール病気とする図式は、あまりにも性急過ぎる気がします。

地球家族エコロジー協会が行っている心理教育は、「病気の治療」を目指すものではなく、人間が「よりよい人生を送る」「自分らしく幸せに生きる」ための支援に焦点をあてます。仮に問題行動が病気だと仮定しても、根本が解決されず再発を起こせば、それは本人にとっても周囲にとっても決して幸せな結果とは言えないでしょう。本人も周囲も幸せになるための支援方法として、私たちは心理教育を活用しています。

注記:現在日本におけるカウンセリングというものの立場は、資格の問題を始めとして、多くの問題や困難をはらんでいます(カウンセラー資格に関することはこちらのページをご参照ください)。また、カウンセリングをうける人は病人といった考え方もまだまだ少なくないという現状があります。その辺りのことを踏まえ、理解の助けとするべく順を追ってお話します。


1.心に関係する不適応状態

ストレスが導く心身不適応状態

ストレスが身体化して現れたものが心身症、情動化して現れたものが神経症や精神病、行動化して現れたものがアディクションや不適応行動と言われています。

各不適応状態(病理性を含む)の定義と種類
心身症 嗜癖
(アディクション)
神経症 精神病
定義 身体症状を主とするが、その診断と治療に心理的因子について配慮が特に重要な意味を持つ病態
(原因は心理的問題であるが、現れる症状は身体的)
悪い習慣に溺れること
〔医〕アルコール、薬物等の刺激を絶えず求める病的傾向
不安・過労・精神的ショックなど、主に心理的社会的な原因によって起こる精神面と身体面の機能障害=ノイローゼ(Neurose)
(器質的な障害は含まない)
妄想・幻覚のような病的な体験や痴呆などがあって、現実を踏まえた行動をとる能力が損なわれており、しかもそれがかなり長期間にわたって続くような精神状態
種類 消化性潰瘍
気管支喘息
過敏性大腸症候群
自律神経失調症など
アルコール依存*
引きこもり
ギャンブル依存
共依存*
アダルトチルドレン*など
不安神経症
強迫神経症(洗浄強迫等)
恐怖症(対人恐怖、不潔恐怖等)など
統合失調症(精神分裂病)
躁うつ病など

(参考文献:『カウンセリング辞典』 誠信書房)
(注)神経症、精神病(一般的には内因性精神病を指す)は、分類上は共に精神障害に含まれます。精神疾患の詳細な分類をお知りになりたい方は、ICD-10やDSM-4のご参照をお勧めします。
*印はアディクションのページにて語句の解説として紹介しています。


2.カウンセリング心理学と臨床心理学の相違

上記表にも示していますが、現れる症状が違えばそれに対する対応も異なってきます。ここでは特に、病理を扱う専門分野の学問である「臨床心理学」と、病理性を持たない人間を扱う分野の学問である「カウンセリング心理学」を対比的に示します。

カウンセリング心理学 臨床心理学
対象 実存性(「今ここ」に在る人間) 病理性(現にある「疾患」)
視点 全人的:人間の苦難は力動的過程 論理的:全てを病理的にとらえる
アプローチ 心理教育的 病理臨床的

(参考文献:『カウンセリング心理学入門』 國分康孝 著 PHP新書)

近年、「カウンセラー」=「臨床心理士」という風潮が強まりつつあるようですが、あくまでも臨床心理学が扱う範疇は疾患そのものであって、悩み苦しむ人間そのものを対象にはしているわけではありません。

たとえば昨今非常に多くの数を有する「不登校・引きこもり」について言えば、行動が著しく偏ってはいるものの、そのほとんどの者は現に精神的疾患を有して いるわけではありません。つまり彼らは病気にかかっているわけではなく、今ここに生きる人間として、非常に大きな悩み苦しみを抱えているだけに過ぎません。ただそれを社会的に認知されるような処理ができないのです。

このような状態にある者を「病理性をもつ者」という範疇に入れてしまえば、何かしらの病名を付けられ、その「病気」に対する治療が行われ、その結果彼らの抱える本質的な問題が見失われてしまうという危険性が生じます。


3.心理教育と非指示的カウンセリングの相違

カウンセリングアプローチを大きく分けると、「指示的療法」と「非指示的療法」に分けることができます。各療法共に様々な療法がありますが、非指示的療法の代表的なものに、「来談者中心療法(=Client-centered therapy)」があります。指示的療法にも多くの療法があり、その中の一つに行動カウンセリング的手法をとる「心理教育(=サイコエジュケーション)」があります。この二者を比較してみます。

心理教育 来談者中心療法
アプローチ 指示的 非指示的
人間観 心理学でいう「反応(=心)」の仕方がワンパターンの人間に対し、ああせよ、こうせよと条件付けしていかないと、反応の仕方は豊かにならない 人間には良くなる力が内に潜んでいるので、ああせよ、こうせよと教えることなくとも成長する
理論 条件反射理論に基づく 自己理論に基づく
目標 心の教育(複数の思考・感情・行動を学習し、この3つが相互に連携しまとまりある良質の反応を身につける) 自己一致・自己実現

(参考文献:『カウンセリング心理学入門』 國分康孝 著 PHP新書)

カール・ロジャーズが自己理論に基づいて行った来談者中心療法は、カウンセリングの全ての療法のたたき台的な意味合いを持っています。健常者(=精神障害を有しない者)は多くの場合、この方法で回復過程に向かいます。ある方の言葉を借りれば、この療法一つでほとんどの問題 は解決する、とあります。しかし、ロジャーズ自身が自らの著書*の中で、「この非指示的療法では解決しない場合がある」と述べています。
それは病理性を持つものを除き、

  • 極めて不安定な個人
  • 不幸な境遇によって完全に取り巻かれた人

これらの場合において、不可能を可能にするような相談助言は期待しがたいと述べています。この詳細は次の項でお話します。

*『臨床心理学』 カール・R・ロージァズ 著


4.心理教育アプローチを行う意味

冒頭にも記しましたが、私たちが行うアプローチは「心理教育」に主眼を置いています。
その理由は、

  • 悩み苦しむ当事者は(現象が社会的に受け入れがたいものであっても)多くの場合精神疾患を有していない(上記1、2より)
  • 非指示的療法による問題解決が困難(上記3より)

当事者やその家族の多くが、上記3で示したように、極めて不安定であり、不幸な境遇によって取り巻かれています。それは 多くの場合、安全基地であるはずの「家庭」が安全でないことにより呈されます。(家庭内にある暴力、支配、無関心など)このような場合、非指示的なアプローチでは問題が解決しがたいという現状があります。

特に当事者(ここでは引きこもりを例証します)は、人生の長い時間、社会とのかかわりを遮断して過ごしており、上記3の表にありますが、反応(=心)の仕方が非常に限られたパターンしか持っていない場合がほとんどです。人生に対する選択肢の数が非常に少ないため、問題が起こった場合の対処法も限られたものとなります。

問題解決の選択肢の多くを知らない人間には、まず選択肢が複数あることを知るせる必要があります。複数の思考、複数の感情、複数の行動があることを学習し、それらが相互に連携したまとまりのある反応を身につけ、それによって人生の選択肢の数が増し、今後の人生にも起こり得るであろう困難への対処ができるようになります。

カウンセリング心理学を主体とした心理教育を行う目的は、病気治療のように症状のみを"治す"対症療法ではなく、より良い人生を主体的に、また自律的に生きていけるように「心を育てること」にあります。


このページのトップへ