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解決支援者の現場日記 家族問題: 2025年12月

ひきこもり・不登校~安全・安心な家庭をつくるために


引き続き私見を述べます。

池上正樹氏の発言はこうです。




『「待つ」って何もしないで待つわけじゃない。

親子での信頼関係が構築されるのは、

家庭の中が安全・安心な空気に変わった瞬間。

「ちょっとうちの親変わったな」って

(子が親に)今まで言えなかったことや、

嫌なことは嫌と言えるようになるっていう

瞬間なんですよね。

そういう何でも言える空気をどう作り出すかを

考えていくことが必要で、

ずっと待っているだけでいいという話では

全くないです。

変わることを求めるのではなく、

あくまで本人の意思や、本人が言葉にするのを

待つということです。

親として子どもの潜在力を信じるという

ことではないかと思っています』 





「何もしないで待つわけじゃない 」

とは仰っています。

しかし、「親として子どもの潜在力を信じる 」

これが危ない。




こう言われたら、当然親としては

信じない訳にはいかないですよね。

色んな窓口でも「お子さんを信じて」

と言われます。

親は、「信じて」この言葉に弱い。




潜在力は確かにあります。

多くの当事者たちの潜在力を私も見てきました。

ただし、潜在力はじっと待っていても

潜在したままなのです。




「家庭の中が安全・安心な空気に変わった瞬間 」

「何でも言える空気をどう作り出すかを考えていく 」

問題はここです。

具体的にこれをどうつくり出すかです。

そう簡単なことではありません。

実際、最も難しいところでしょう。




池上氏は、

『今、一緒に食事できて、一緒に話ができる、

この関係性は続けていくことが

大事なんじゃないか。

決してそれは

「待つ」ではないんじゃないかなと思います』 


と仰っていますが、

一緒に食事して話ができているような

当事者家庭はほとんどないでしょう。

10年以上も、互いに顔も見ていない、

声も聴いていないというケースも

私は支援の中で経験しています。

話はもとよりですが、先ず一緒の食事などは、

本人たちが一番避けたがることです。




池上氏の意見は、

全般的に実態の把握が弱いように感じます。




ひきこもり問題に長年携わってきた

ジャーナリストとして、当事者家族として、

発言力もある方ですので、

「何もしないで待つわけじゃない 」

とは言われても、親御さんたちは、

結果待ってしまうことになるでしょう。




今回、支援者として看過できないと思い

このブログを書いた理由がここです。

当事者たちの実態が見えなさ過ぎです。




いまだにこういった発言が繰り返されている

ことを見れば、

長期化が進むのもむべなるかなです。




家庭の中を安全・安心な空気に変えるためにも 、

わが子の潜在力を引き出すためにも、

必要なことは、

現象の理解と徹底した痛みへの寄り添いです。




ひきこもり現象は、

毎日継続して起こっていることなのです。

理解できるためには学びが必要です。

待っていられる余裕などないのです。





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ひきこもり・不登校~本人のペースを信じる?


前回お知らせしたニュース記事は、

読んで頂けたでしょうか。




では、池上正樹氏の回答に対して、

看過できないという部分について

私の意見を述べてみましょう。




最初にお断りしておきますが、

あくまでもこの記事に書かれている範囲に

対してであります。

私は直接池上氏にお会いして

お話を伺ったわけではありませんので、

取材記録されている内容に、

どれだけ池上氏の真意が表されているかは

分かりませんので、そのことを考慮したうえで

お読み頂けたら幸いです。




池上氏は、

「自分の状態を最も知っている本人のタイミングや

本人のペースを信じるってことじゃないかな

と思います。だから本人が自らの意思で、

自らの言葉で求めてくるまで

待つってことではないかなと思います」


と述べられていますが、

これでは確実に長期化します。




そもそも大半の当事者たちは、

自身に何が起こってしまっているのかさえ

理解できていません。

痛みを感じ、そこから不安怯え苦悩

抱えている状態です。




病気みたいなもので、

痛みや不調を感じるわけですが、

何の病気でどこが悪くなっているかは、

自分で分からないですよね。

だから医者に診てもらうわけです。




もちろん、何が(例えば「人」)怖いかという

怯えの対象は分かります。

ですが、なぜそこまでの怯えを感じてしまうのか

原因が分かっていません。




「自らの意思で」と言っても、本人は、

何が起こったのか、何をどうすればいいのかも

皆目分からないでいる状態です。

だから延々止まってしまっているのです。




家族会に参加されるような家庭は、

すでに数年は経っています。

長い場合は10年を超えています。

これまでの年月を考えれば、

自分の意思で動き出せないでいることは

歴然としています。




「自らの言葉で求めてくるまで待つ 」

とも仰っていますが、これまた当事者たちは、

自身の感情や意思を適切な言葉で伝えるのが

とても苦手です。もっと言うと、

感情鈍麻思考停止の状態です。




そんな状態のわが子が、

自ら動き出すのを待っていても

ただただ長期化するだけです。

結局、親のわが子のやる気への依存です。

「人頼りの姿勢」となります。

「待つ」=「動かない」となるのです。




「「私の子だから大丈夫」と思える信頼が、

本人には偉大なメッセージとして伝わり、

生きる糧にもなってくる」


と、池上氏は発言しておられますが、

この「私の子だから大丈夫」 は、

信頼と言うよりも「楽観性バイアス」です。

「うちの子にかぎって」と同じです。

なんの根拠もありません。

長年のわが子の日々の生活ぶりを見て、

真からそう信じられるでしょうか?




池上氏の主張は、

「自分の状態を最も知っている本人」

を前提にしてしまっていることでの過誤です。 

これだと、どうしても本人頼りになってしまい、

親は待つしかなくなるのです。

実際は、本人は知っている(分かっている)

わけではないのです。





「待つのは何もしないで待つわけじゃない」とは、

池上氏も仰っていますが、

それについても次回具体的に述べてみましょう。

(続く)





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