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解決支援者の現場日記

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ひきこもり(不登校)~事態にどう向きあう


コロナの影響もあり、不登校児童は昨年19万人を超え、前年度より約1万5千人も増え過去最多

だったようですが、近年は、コロナ禍以前から増加傾向にありました。

不登校や引きこもりのご相談を受けていますと、登校させるためには、働かせるためにはどう

したらいいかと、いきなり事態の収束を願われます。

既にこれまで数年を経過している現状から察すれば、それが甚だ困難であることを認識されて

ください。




何事も手順というものがあります。

いきなりの結果を求めることは、かえって事態を混乱させます。

先ずご家族が行うことは、事態に向き合う姿勢を変えることです。

その際、目の前の事態(わが子の状態)をどう捉えているかで、向き合い方が違ってきます。

「困ったものだ。何を考えていることやら」と思えば、わが子を動かそうとします。

わが子の逸脱行動は、「家族病理」の症状と捉えてみて下さい。




私たちの身体は、ホメオスタシス(恒常性保持機能)によって、体温や血圧などが自動調整され、

生理的バランスが保たれ健康が維持されていますね。

家族という有機体も同じで、互いが安定しようと無意識にバランスを取り合っています。

子どもはいち早くこのバランスの乱れに気づき、非日常的な行動により、不均衡を呈した家族の

“救援者”として、“揺り戻し作用”を担います。




私たちは欲求を満たそうとするとき、要求として意思表示します。

ですが、それが出来ないとき、症状として現れます。

ストレスで円形脱毛症になったり、胃に穴があいたりしますね。

不登校児童によくある自律神経失調症もそうです。

ですから、不登校や引きこもりというのは、ひとつの症状であるわけです。

ですが、不登校や引きこもりが病気と言っているわけではありません。

発熱や嘔吐は、不良を改善させるための症状ですよね。

言わば自己治療です。

ですから、不登校や引きこもりも治療法なんです。

これを「治療的行動化」と申します。

家族の不均衡(ヤマイ)や、そこから抱えてしまった自分の中の混乱を治そうとしているのです。




このように事態を捉えれば、自ずと向き合い方が変わってくるはずです。

わが子をいきなり動かすのではなく、自分がやるべきことが見えてくるはずですね。









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ひきこもり・不登校~ぬくもりを乞う"乞い煩い"


ひきこもり(不登校)は、自己本来の姿を見失い、すっかり変容してしまっています。

ありのままでいることを許されなかったからです。

どういうことかと申しますと、わが子に対する愛おしさから親がかける期待通りに生きることが、

愛され続けるために必要だと信じ込んできたからです。




親が喜んでくれることは子どもにとっても嬉しいことです。

がしかし、親の期待が子の資質に合っていて、尚且つ子ども自身もそれを好んでいる場合は問題ない

のですが、そうでない場合、子どもは自分を殺して期待に応えようとします。愛されたいからです。

そうすると、健全な自己愛アイデンティティ(自己存在意義)の構築が妨げられ、ペルソナ(仮面)を

かぶり自己を欺き、空虚感をぬぐえぬようになるのです。




ありのままの自己に対する自尊感情(セルフ・エスティーム)が高められてこそ、「共感」という

社会性の土台が築かれます。

ですから、他者との親密な関係を結べなくなってしまっているのです。

「親密さ」とは、自分が自分らしくいられ、相手のその人らしさも承認できる関係のことです。

愛されるために自分をごまかす関係は偽りの親密さです。

自分は存在する価値があるという〈自己信頼〉と、他者は信頼に値するという〈他者受容〉

「基本的信頼感」が十分に備わっておらず、親密さへの恐怖すら抱いています。

空虚な存在としての自身を覚られてしまう不安見知られてしまう不安に怯えているのです。








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ひきこもり・不登校~驕りが生む苦悩


自然と関わっていた時代は、精神疾患や精神障がいは少なかったそうです。

なぜなら、大自然に逆らおうなんて大それた気持ちをもたなかったからです。

自然に対して従順になり、自然に逆らう代わりに自然を師として学び、自然の環境に適応するよう

に努めていたのです。

大地は、深き慈愛をもって私たちを保育する「母なる土地」であると同時に、地震などのように

「厳父」としての役割をも務めます。恵みと天災はセットなのです。

日本人は、母なる慈しみに抱かれながら、父なる厳しさに逆らうことの愚かさを知っていたのです。

自然を畏怖し、あるがままに受け入れていたのです。




現代は、畏れを知らず何でも意のままにコントロールしようとしています。

その分、思うようにならない機会が増え、ストレスを抱え心を病むわけです。

ひきこもり現象も、子育てにおいて親のコントロール幻想が招いたひとつの結果です。

期待という侵入で、わが子を「私の思い通りの子」にしようとしてしまってはいませんでしたか?

自然はその性質を活かすという姿勢が大切です。

調理も、一流の料理人ほど食材そのものの味を活かしますよね。

コントロールは、自己都合で強引に動かすことです。

コントロールしていいのは自分だけです。




わが子を変えようとしている限りは、ストレスが絶えず現状の改善はままならないでしょう。

人も自然の中で生きる動植物と同じで、言わば「自然の子」です。

敬意をもって、敬畏することが大切です。

やるべきことは、事態をいきなり変えることではありません。

(続く)

※参考/『天災と日本人 寺田寅彦随筆選 (角川ソフィア文庫)』寺田 寅彦,  山折 哲雄著









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ひきこもり・不登校~失われしもの④


コミュニケーション・スキル(話し方)

アサーション・スキル(自己主張)

ソーシャル・スキル(対人関係)


これらは、ひきこもり者たちが自覚もし、最も苦手意識をもっているものです。

挨拶程度も充分にできなくなっている者も少なくありません。




アサーション・スキルは、適切な自己主張ですが、そもそも主張、表現できる「自分」をもてて

いません。他者に伝えたい自分がないのです。

ですから、表現する意欲自体欠けます。




ソーシャル・スキルは、他者との距離感(間合い)が測れないでいます。

関わり方が分からないのです。

近づき過ぎず、離れ過ぎず、相手との関係性から立ち位置を考えていかなければいけませんが、

それができません。




これらが欠落しているのは、健全なアイデンティティが構築されていないためです。

アイデンティティとは、自分が自分であることの充実感、存在意義(理由)です。

独自性自分らしさの感覚ですね。

健全なアイデンティティをもち得てこそ、先のスキルが身につきます。

ひきこもり者たちは、不健全なアイデンティティをもってしまっています。

「ダメ人間」「誰からも必要とされない」「誰からも受け入れられない」等です。

もちろん、誤った自己認識です。




アイデンティティの構築のためには、「機会」というものが重要です。

なぜなら、人や環境との関わりの中で自覚できていくものだからからです。

人との出会いや様々な経験から自己発見していくのです。

また、問題解決力も、機会によって養われます。

チャンスは“好機”ですからね。

ひきこもりは、この機会を自ら放棄しています。

最も必要なものをかえって断ってしまっています。




ひきこもり期間が長くなれば長くなるほど、空白の歴史をつくってしまい、世代の共有といった

ものが出来なくなります。

普通に経験しているであろうことを経験していないために、特に同世代との接触を避けます。

いわば「もぬけの殻」状態の自分をさとられたくない、知られたくないといった“さとられ不安”

“見知られ不安”を抱えていますので、自己開示が困難となるのです。




以上、これまで述べてきたように、様々なものを失ってしまいますので、長期化させていいことは

何もありません。

救い出す機会を与えられるのは、家族です。








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ひきこもり・不登校~失われしもの③


「学ぶ姿勢」の欠如

支援の中で、これはとても強く感じます。

学びの場から離れて久しいからか、何事かを学習、習得していくことがとても困難になっています。

本質的な原因は、自己否定感からでしょう。

自己否定が強ければ、成長を自ら阻みます。

自分を大切に出来ないからです。

前回述べたように、セルフ・ネグレクトで自分を粗末に扱います。

また、将来を絶望視していれば、今に一所懸命になる意味を感じられないので、自ずと何かを学ぶ

ということにも後ろ向きになるのです。




現実否認も原因にあげられます。

否認は、正直さや素直さが失われます。

そうなると、謙虚さも無く、自己の見識への拘り、囚われが強まります。

人の声が耳に入らないというわけです。

かと言って、自分を信頼できているわけではなく、これまでの経験にしかすがれないのです。

他者不信も影響して、周囲からの援助を振り払うことすら平気でしてしまいます。




学習により得た知識を、自身の生き方へ活用することも不得手です。

経験とのすり合わせが出来ないですね。

思索するということが不慣れになっています。

これは先に現実否認と述べましたが、思考停止状態にあるからです。

考えると思い煩い辛くなるので、考えることを止めます。

ですから、よく親御さんから「何を考えているのだろう?」とか「将来を考えいるのだろうか?」

などの疑問が聞かれますが、答えは「考えていません」

なので、信じて見守っていては長期化するだけなのです。








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ひきこもり・不登校~失われしもの②


「忍耐力」これもあげられます。

ご家族はお気づきでしょうが、万事面倒くさがります。

ゲームやインターネットぐらいでしょうか、率先して行うものは(笑)。




これは好き嫌いだけで物事を判断する習慣が身についているからです。

「快楽原則」と言いますが、不快なことは一切避けるとなれば、当然、自堕落な生活になって

しまいます。

「現実原則」と言って、必要性での判断ができなければ、現状を改善することも、自身を成長

させることもできません。

嫌なことでも自分にとって必要なことであれば実行していける「自制心」が働かなければ、

自律ができていないわけですし、当然「自立」は無理です。




自制も自律もセルフ・コントロールです。

自分をコントロールできないということは、常に制御不能の混乱状態です。

不快に耐え、より必要なことを優先させられる力を失っていれば、傷つくことからの過度な逃避

常に繰り返し、新たな挑戦にも一切取り組まない結果となるのです。

これがセルフ・ネグレクトの状態です。

(続く)








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