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解決支援者の現場日記 時事問題

ひきこもり・不登校~安全・安心な家庭をつくるために


引き続き私見を述べます。

池上正樹氏の発言はこうです。




『「待つ」って何もしないで待つわけじゃない。

親子での信頼関係が構築されるのは、

家庭の中が安全・安心な空気に変わった瞬間。

「ちょっとうちの親変わったな」って

(子が親に)今まで言えなかったことや、

嫌なことは嫌と言えるようになるっていう

瞬間なんですよね。

そういう何でも言える空気をどう作り出すかを

考えていくことが必要で、

ずっと待っているだけでいいという話では

全くないです。

変わることを求めるのではなく、

あくまで本人の意思や、本人が言葉にするのを

待つということです。

親として子どもの潜在力を信じるという

ことではないかと思っています』 





「何もしないで待つわけじゃない 」

とは仰っています。

しかし、「親として子どもの潜在力を信じる 」

これが危ない。




こう言われたら、当然親としては

信じない訳にはいかないですよね。

色んな窓口でも「お子さんを信じて」

と言われます。

親は、「信じて」この言葉に弱い。




潜在力は確かにあります。

多くの当事者たちの潜在力を私も見てきました。

ただし、潜在力はじっと待っていても

潜在したままなのです。




「家庭の中が安全・安心な空気に変わった瞬間 」

「何でも言える空気をどう作り出すかを考えていく 」

問題はここです。

具体的にこれをどうつくり出すかです。

そう簡単なことではありません。

実際、最も難しいところでしょう。




池上氏は、

『今、一緒に食事できて、一緒に話ができる、

この関係性は続けていくことが

大事なんじゃないか。

決してそれは

「待つ」ではないんじゃないかなと思います』 


と仰っていますが、

一緒に食事して話ができているような

当事者家庭はほとんどないでしょう。

10年以上も、互いに顔も見ていない、

声も聴いていないというケースも

私は支援の中で経験しています。

話はもとよりですが、先ず一緒の食事などは、

本人たちが一番避けたがることです。




池上氏の意見は、

全般的に実態の把握が弱いように感じます。




ひきこもり問題に長年携わってきた

ジャーナリストとして、当事者家族として、

発言力もある方ですので、

「何もしないで待つわけじゃない 」

とは言われても、親御さんたちは、

結果待ってしまうことになるでしょう。




今回、支援者として看過できないと思い

このブログを書いた理由がここです。

当事者たちの実態が見えなさ過ぎです。




いまだにこういった発言が繰り返されている

ことを見れば、

長期化が進むのもむべなるかなです。




家庭の中を安全・安心な空気に変えるためにも 、

わが子の潜在力を引き出すためにも、

必要なことは、

現象の理解と徹底した痛みへの寄り添いです。




ひきこもり現象は、

毎日継続して起こっていることなのです。

理解できるためには学びが必要です。

待っていられる余裕などないのです。





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ひきこもり・不登校~本人のペースを信じる?


前回お知らせしたニュース記事は、

読んで頂けたでしょうか。




では、池上正樹氏の回答に対して、

看過できないという部分について

私の意見を述べてみましょう。




最初にお断りしておきますが、

あくまでもこの記事に書かれている範囲に

対してであります。

私は直接池上氏にお会いして

お話を伺ったわけではありませんので、

取材記録されている内容に、

どれだけ池上氏の真意が表されているかは

分かりませんので、そのことを考慮したうえで

お読み頂けたら幸いです。




池上氏は、

「自分の状態を最も知っている本人のタイミングや

本人のペースを信じるってことじゃないかな

と思います。だから本人が自らの意思で、

自らの言葉で求めてくるまで

待つってことではないかなと思います」


と述べられていますが、

これでは確実に長期化します。




そもそも大半の当事者たちは、

自身に何が起こってしまっているのかさえ

理解できていません。

痛みを感じ、そこから不安怯え苦悩

抱えている状態です。




病気みたいなもので、

痛みや不調を感じるわけですが、

何の病気でどこが悪くなっているかは、

自分で分からないですよね。

だから医者に診てもらうわけです。




もちろん、何が(例えば「人」)怖いかという

怯えの対象は分かります。

ですが、なぜそこまでの怯えを感じてしまうのか

原因が分かっていません。




「自らの意思で」と言っても、本人は、

何が起こったのか、何をどうすればいいのかも

皆目分からないでいる状態です。

だから延々止まってしまっているのです。




家族会に参加されるような家庭は、

すでに数年は経っています。

長い場合は10年を超えています。

これまでの年月を考えれば、

自分の意思で動き出せないでいることは

歴然としています。




「自らの言葉で求めてくるまで待つ 」

とも仰っていますが、これまた当事者たちは、

自身の感情や意思を適切な言葉で伝えるのが

とても苦手です。もっと言うと、

感情鈍麻思考停止の状態です。




そんな状態のわが子が、

自ら動き出すのを待っていても

ただただ長期化するだけです。

結局、親のわが子のやる気への依存です。

「人頼りの姿勢」となります。

「待つ」=「動かない」となるのです。




「「私の子だから大丈夫」と思える信頼が、

本人には偉大なメッセージとして伝わり、

生きる糧にもなってくる」


と、池上氏は発言しておられますが、

この「私の子だから大丈夫」 は、

信頼と言うよりも「楽観性バイアス」です。

「うちの子にかぎって」と同じです。

なんの根拠もありません。

長年のわが子の日々の生活ぶりを見て、

真からそう信じられるでしょうか?




池上氏の主張は、

「自分の状態を最も知っている本人」

を前提にしてしまっていることでの過誤です。 

これだと、どうしても本人頼りになってしまい、

親は待つしかなくなるのです。

実際は、本人は知っている(分かっている)

わけではないのです。





「待つのは何もしないで待つわけじゃない」とは、

池上氏も仰っていますが、

それについても次回具体的に述べてみましょう。

(続く)





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ひきこもり・不登校~いつまで待つんですか?


私の支援の歴史を振り返る内容を

続けてお伝えしておりましたが、

ちょっと気になるニュースを拝見しましたので、

今回はそれに関しての私の意見を

少しお話ししてみたいと思います。

URLは下記ですので、
先ずはご覧になってみてください。
https://news.jp/i/1350648357004739013




大分市で開催された

「ひきこもりの子どもを持つ親の交流会」

における記事ですが、

ジャーナリストの池上正樹氏が、

参加していた60代の男性から発せられた

「いつまで待つんですか?」という質問に

答えた内容が書かれていました。




池上氏は、

ひきこもりに関し長きにわたって取材し、

「KHJ全国ひきこもり家族連合会」にも

参加しておられる方で、

発言には一定の影響力のある方だけに、

その内容が看過できないものでしたので、

実際の支援実践家としての私の意見を

述べてみたいと思いました。




記事によれば 、この問いが発せられた瞬間、

その場が緊張感に包まれたようです。




この言葉は、単に時間的な見通しを

問うものではありません。

それは、心身ともに疲弊した親が抱える不安、

焦り、そして出口の見えない状況に対する

悲痛な叫びそのものであったでしょう。




この短い一文には、これ以上どうすれば

良いのか分からないという、

親としての深い葛藤が込められています。




ひきこもり支援における最も核心的

かつ困難な課題
を浮き彫りにしたものだと

言えるでしょう。




昔、私もこういう場面に

出くわしたことがあります。

ひきこもりの講演会で、

登壇していたのは精神科医でした。

2時間くらいの講演でしたでしょうか、

終わって質問の際に、7、80代の高齢の男性から

こんな発言がありました。

「それで結局どうすればいいんですか?」と。




精神疾患、障がいの話に終始し、

具体的な解決策の話は何もなかったのです。

あらかた、「どうすれば?」の答えは、

「子どもを責めず、信じて見守ってあげましょう」

です。




この言葉が、どれだけ多く

長期化を招いてしまったことでしょう。

私は、「悪魔のささやき」と申しています。

10年を越す家庭にも

そう答えているケースもあります。

中には、

「生きているだけでもいいじゃないですか」

というのも聞かれたりしますが、

あきれてものも言えません。




池上氏も「待つ」という言葉の危険性は

感じてはおられるようですが、

氏自身、その言葉がもつ真の破壊性には

気づけておられないようです。




次回、池上氏の回答の看過できない部分を

具体的に説明してみましよう。

(続く)





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ひきこもり・不登校~無用な犯人捜し①


不登校やひきこもりの増加で、親たちが疲弊しているといった内容の記事がよく見られるように

なりました。

その中で、「自分を責めた」という母親たちが約7割もいるといった追い詰められた親たちの

現状も挙げられていました。




長期にわたりわが子が登校しなくなったり、部屋に閉じこもっていれば、当然困惑するばかりか、

苛立ちや抑うつも続きます。

子の養育の結果(育てあげる)を誇りとする親にとっては、耐え難い苦痛です。

責めてしまうのも自然な流れなのかも知れません。




こういった親たちの状況に対して、ある記事の中の親たちに向けられた支援者の言葉に

「あなたは悪くない」

「悪いのは、多様性を認めない社会であり、学校に行かない選択肢を認めない社会。

社会が変わっていく必要があります」


というものがありました。

こういった発言はまま聞かれますが、ここには誤解を招きかねない大きな考え違いがあります。

支援者自身が二者択一思考になっていて、「悪いか悪くないか」「責めるか責めないか」

「Aは悪くない。他が悪い」
といった多様な視点を欠いた極端な見方になってしまっています。

この辺りについて話してみましょう。

(続く)









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ひきこもり・不登校~成長の可能性への信頼②


前号の新聞記事に揚げられていた方の意見の中にもあったのですが、メディアで報道される記事には

これまでも「社会が理解し容認すべき」と言った主張が目立ちます。

就労ありきの支援が適切ではないということは、ひきこもりの実態が見えていれば最初から分かり

きったことですから、今さらという感もありますが、もちろん社会、周囲(家族)の理解は必要なの

ですが、それより問題は、環境(社会)が自分に合わせて(分かって)くれるべきだという考え方です。

問題解決のための前提は、環境は自分の都合に合わせて自然と変わってはくれないということです。




この記事の中でも、「無理ならゆっくり休んで次を探せばいい。そんな支援こそ、苦しむ人を

つまずきから立ち直らせ、社会参加を促すのでは」
と、語られていますが、ゆっくり休ませること

よりも、無理ではなくそれが出来る状態に育成してあげること、つまずきから立ち直る方法を身に

備えさせる支援こそ必要なのです。

環境に振り回されず、流されず、環境に自らはたらきかけていく主体性がより良く生きていくため

には欠かせません。




「社会が変わるべき」と言った論調の報道では、出来ないままの状態に合わせてあげるべきといった

意味あいが強く、当事者たちが成長してそれを克服していくといった視点が全く欠けています。

つまりひきこもりは、社会的弱者のままといった認識です。

だからこそ、簡単な作業からさせて、人にも少しずつ慣れさせていくという支援にしかならないのです。

そして、『ただ、社会の中にいてもいいんだ』と感じられる支援といった極端で、無責任な発想

なってしまいます。

(続く)









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ひきこもり・不登校~最も求められる支援


2022年10月に文部科学省から発表された2021年の小中学生の不登校児童生徒数は、24万4940人で

9年連続増加で過去最多ということです。

この数字は、さらなるひきこもりの増加を予感させます。




これらの現象を生み出す社会背景から見えてくるものは、便利で誘惑の多い社会では自律心自制心

要求されるということです。

自己を制御できなければ、目先の快楽に溺れ利己的になり、自分がより良く生きていくために何が

必要かを判断することもできなくなります。




ひきこもり者たちに共通してあるのは、自尊感情の欠如です。

「求められることはあるのだろうか?」

「ここにいていいのだろうか?」

「生きる意味はあるのだろうか?」


といった疑問が常にあります。

そうあると「拒否感受性」が強まります。

「拒否感受性」とは、「他者が自分を拒否するのではないかと予想したり、些細な行動から拒否された

と受け止め、過剰反応したりするような傾向のこと」
です。

このような低い自尊感情のまま社会へ入れば、再び傷つき体験をしてしまうでしょう。

「生きていくことへの覚悟」ができるためにも、〈より良くいきていく支援〉〈生きる意味への支援〉

が求められるのです。









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ひきこもり・不登校~命運を分ける前提①


内閣府から「ひきこもり」の実態調査の結果が令和5年3月に発表されました。

15歳から64歳までで推計146万人。

先の平成30年度の調査では、40歳から64歳までの中高年のひきこもりが、61.3万人で、その半数

以上が40歳以上と報告され、もはや若者特有の問題ではないことが、明らかとされました。




こういった結果から、中高年のひきこもりがクローズアップされたことで、より問題が社会的要因論

へスライドしてしまっている感があります。

労働問題に象徴される社会構造の歪みを持ち出されれば、当然対策として労働環境の整備や偏見・

差別などのひきこもり排除論を無くそうといった動きになってしまいます。




原因と解決策を考えるとき、どこを起点とするのかしだいで、その後が随分変わってしまいます。

どこに起点を置くのかが、そのことに於いての「前提」となるのです。

問題を考えていく前提が混乱していたり、家族で解決案の起点が共有されていなかったりすれば、

事態はより複雑化するばかりです。

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ひきこもり・不登校~価値観の転換


ものごとを実行していくということは、価値観行動を時間とともに変化させるということです。

事態に対しての姿勢態度を変えるには、価値観を変えていく必要があります。

価値観が変われば視点が変わります。見えるものが違ってくるのです。

見えていなかったものが見えてくるということです。




人は行動する時に、必ず無意識に自分なりの仮説(こうすればこうなる)に基づいて行動します。

この仮説を生み出すのが自己の価値観です。

わが子の在りようは、両親の価値観の総和です。

「育てたように子は育つ」です。

現状を改善するための手立てを実行していくためにも、価値観の見直しが必要です。




「育てる」という側面での価値観のひとつを提案するとすれば、「自己都合を優先させない」

ということです。

変えられるものを活かして、変えられないものから受ける影響を変えることこそが人生の妙味、

醍醐味
です。

その二つを見分ける智恵を養いましょう。




「8050問題」を受け、社会の偏見・差別をなくすべきだという意見が見受けられますが、そうではなく、

他者の評価に対して、どういう態度で向き合い、自身がやるべきことにどういう姿勢で臨むかは、

自分の意思で自由に選択できるのですから、社会に責任転嫁せず、主体的に自分を変えていけば

良いのです。









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ひきこもり・不登校~「8050問題」に至るわけ


不登校やひきこもりが、改善しないまま長期化してしまうのは何故でしょう。

親は最初期に、なんとかわが子を動かそうとし働きかけるも、反発され挫折し、失敗に終わると、

今度は周囲に知られることを避け、状況を取り繕うようになります。

「部屋の中で何を考えているのだろう」と部屋の中のわが子の状態に意識が向き、そこに囚われ

生じます。




ひきこもりは、自分を蔑ろにする〈緩慢な自傷行為〉とも言えます。

当然、行く末を思い、心配を募らせていきます。

そうなると、わが子のと言うよりも、自分自身の不安な気持ちを払拭するために、本人が取るべき

責任の肩代わりをし始めたり、世間に知られることを恥じこっそりと、しでかした後の後始末を

しようとします。

本人が現実から逃避することを家族が可能にしている限り、自分に問題があることを否認し続け、

助けの必要性を否定し続けることになります。




思うように取り繕えずその状態が続けば、怒りも出てきます。

平常を装おうと、「いつか気づくはず」と自分に言い聞かせ、「家の事を手伝ってくれているし」

「頼まれごともしてくれているし」「外出するときだってあるし」と、現実に気づいていることを

隠し、本当は自分がどう感じているかを誤魔化し、否認します。




否認は、現実と争うことです。

争えば現実を敵にまわし、事態の好転の可能性など信じられず、一切のはたらきかけを放棄します。

何もしないということは、その状態に屈服し、ただ打ちのめされているだけです。

そこに主体性はありません。

これが、「8050問題」を生じさせている真の原因です。









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ひきこもり・不登校~社会の変化を待つ?①


ひきこもりは一個人や一家庭の問題ではなく、社会が生み出した問題であるという主張も聞こえます。

特に「8050問題」が叫ばれ、今や親が他界しても死亡届すら出せず死体遺棄で逮捕されてしまう、

昔の時代劇のナレーションにあった「死して屍拾う者無し」という様相を呈している現状や、

終身雇用や年功序列もなくなり、リストラや非正規雇用の増大、派遣切りといった雇用不安を背景に、

確かに不安定な社会が、逃避としてのひきこもりを生じさせているかのようです。




では、これらが原因とすれば、解消していくためには社会の変革を待たなければならないので

しょうか?

当事者家庭の親たちが世間体を回避するために事態を放置した結果、長期化が進んでいる。

したがって、社会が多様な生き方を認め偏見を無くすことで、相談に出向きやすくなり解決が

早くなる。といった意見もあります。

これもまた、世間の偏見がそんなに簡単に無くなるものでしょうか?

(続く)








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